アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
お店を出て、街を抜けて、公園に来た。
私は、いまだに状況が把握できなくて、先輩の手から伝わる温度だけを感じていた。
先輩、先輩、先輩、先輩、だ。
もう理由なんかどうでも良かった。
ただ、あなたがここにいることだけで、それだけで、
それだけで。
「…蓮見」
先輩の、一重の瞳が、私だけに向いている。
本じゃなくて、私だけに。
「…蓮見、」
「なんで、来たんですか…」
心とは裏腹に、きつい口調になってしまった。
「…嘘ついたから」
「え」
「好きな人、いない。本当は」
先輩が、俯いた。
見間違いかも、しれないけど、先輩、泣きそうな顔してた。
「俺、昔好きだった子が失恋した時、相談にのってあげたことがあったんだ」
ぽつり、ぽつり、と明かされる先輩の過去。
「俺はその子のことがまだ好きだったから、俺を頼ってくれて、嬉しかったし、同じくらい辛かった。でも、ある日、その子に告白された。普通に嬉しかった。だから付き合った。だけど、乗り換え早いんじゃないの、とか、失恋して傷ついてたから雰囲気に呑まれただけだよとか、逆に吉川くんがかわいそうだよ、とか、周りの意見に流されて、彼女は結局…俺との関係も流した」
先輩の声が、微かに震えている。
「だから、怖かったんだ。状況が、あまりに似てたから」
先輩、
「何度も思った。蓮見と、違う形で出会いたかったって…っ」
先輩、先輩、そんなに悲しいこと言わないで下さい。