アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「わー! もうだから何っ、さっきから! 駄目!」
「いや、隙だらけだったから」
「隙があったらチューするってジローラモかよ! いやよく知らないけど!」
「3年間そばにいれなかったから、それなりに焦ってるんだ。わかってよ」
「へ……?」
「あと、僕駆け引きとか知らないんだ、ごめんね」
「………」
彼の言葉に驚き思わず絶句した。
彼は、そんな私を見て爽やかに笑っている。
青い瞳の奥に潜んだ獣のオーラを、私はひしひしと感じ取っていた。
「とりあえず今日はポーカーフェイスな椎ちゃんが赤面してる所見れたから、ミッションクリアかな」
「……ミッション……?」
「因みにさっきのキスは、もし付き合ったら僕にとっては挨拶程度だから、覚悟しててね」
「………」
……獣が、舌舐めずりをしている。
女の子と間違えられるくらい可愛かったあゆむ君を返してください。お願いします。
私は静かに胸の中でそう願ったが、今目の前で意地悪く笑っている策士な彼を見て、現実に引き戻された。
彼の言うとおり、私はまんまと攻略されてしまうのだろうか。
いや、そんな筈はない……と思う。
何故かハッキリ否定できないのは、この目の前の男から放たれる、狙った獲物は逃がさないオーラにあてられてしまっているからだと思う。
「……とりあえずもうちょっと離れようか」
「唇きっと上手に描けるね、実際に触れたからね」
「うるさいよ本当に」
「はは」
end