アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]


衝撃的な発言に、私は思わず顔を上げイチを見つめた。

イチの瞳は、いつものように冷淡で暗い。でも、よく見ると瞳の奥に抱えきれないほどの切なさを感じた。

「最新型は、より人間的な考えになるようにそうプログラムされている。あまり完璧にならないように……強くプログラミングされなかったことは忘れたりもする」

「そ、そうなんだ……? でも、イチは自分がロボットだってちゃんと分かってるんだよね?」

「頭では理解している。でも」

イチは、そこまで言いかけて口を閉ざし顔をうつむかせた。

「イチ……?」

私はそんな彼が心配になり、彼の完璧な顔を覗き込んだ。

彼の完璧な顔は、見たことないくらいに切なそうに歪んで見えた。

『中身は鉄の塊なんでしょう』

さっき彼に言った言葉が、鋭く胸に突き刺さった。

「……こんなに人間は苦しく生きづらい生き物ならば、俺はもっとポンコツなロボットでありたかった、ただの鉄の塊でありたかった。ただただ同じ作業を繰り返し、誰の言葉にも反応せず、感情も動かされず、人間にはできない仕事をこなす、そんな鉄の塊に……」

イチのこんなにも弱々しい声を、私は初めて聞いた。

……今、目の前にいる彼は、ロボットだ、鉄の塊だ、それは事実だ。

思わず自分の手首を握りしめてみる、脈がとくとくと動いている、血が通っている、私は人間だ、これも変わらない事実だ。越えられない壁だ。

でも、今目の前にいる彼を抱きしめてあげたいと思ってしまうのは、何故なのか?

説明して、ほしい。


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