アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「ヨリ様のことを思うと、自分の中の情緒のレベルと、表情パターンの数値が一気に上がるのを感じる」
いつも通りの無表情に戻ったイチが私の手を握り、距離を詰めてきた。
指と指が絡まって、イチに私の鼓動がカウントされてしまいそうだった。
「ほら、上がった」
私の指をなぞりながらイチが囁いたので、私は迂闊にも少しドキッとしてしまった。
「そ、それは一体、どういう……」
「なんでなのか教えろよ、ヨリ様」
「そ、そんなの私だって」
「教えられないなら、約束しろ」
イチの鋭い瞳に見つめられて、私は身動きができなくなった。
「お見合いには行くな」
「な、なぜ……」
「理由は分からない、でも不快だ。だから行くな」
「じゃ、ジャイアンスピリッツがプログラミングされている……恐ろしや……」
私は思わず身を引いて彼から離れたが、すぐに距離を縮められた。
「俺だけがヨリ様の世話を焼いていたい、という意味だ」
完璧な顔立ちのままそう言い放ち、彼は上から私を見下ろして徐々に屈んだ。
そして、私の額にキスをした。
「え!? なに、なに!? おでこにトーンカスついてた!?」
額をおさえてパニック状態になっていると、イチは私が描いた少女漫画のネームを指差して言い放つ。
「ヨリ様が理想としていることを、実行したまでだ」
「じ、実行しなくて、大丈夫だよ……」