アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「新しい機能は、温度を感知できることなんだ」
「温度……?」
「熱い、寒い、という感覚が今まで俺にはなかった。でも、今は分かる。ヨリ様が冬を嫌いな理由も分かるし、ヨリ様の体温も分かる。こんなに嬉しいことはない……」
本当に心から神に感謝するように彼は囁く。
熱いとか、寒いとか、人間にとっては当たり前のことすぎて、そんな当たり前の機能が備わったことに感動しているイチを可愛いと思った。
しかし、冷気についに耐えられなくなり、とりあえず中に入ることを促した。
部屋に入ると、イチは温かい、という言葉を繰り返した挙句、今度はベッドに向かい布団に包まり、改めて感動しているように温かい、と呟いたので、おかしくて笑ってしまった。
「ヨリ様、こっちへ来て」
布団に包まりながら、上目遣いで彼が私を呼んだ。
「な、なんで、やだよ」
「え、なに、ロボットごときにドキドキしてるの?」
「なんだとう……?」
……ロボットごときに挑発されて乗るなんて、もっともっと馬鹿らしい。それは分かっているのに、私はイチの少し色っぽい目つきに負けまいと、ベッドへ近づいた。
その瞬間、腕を引っ張られ布団の中へ引き寄せられた。
「わっ、何すんのいきなりっ」
「ヨリ様の体温を感じてる」
「感じなくていいよ!」
新しい機能がそんなに嬉しいのか……そう思いながら私はイチに後ろからぎゅっと抱き枕のごとく抱きしめられていた。
なんでこんなロボットごときにドキドキしなきゃならないのだ……不本意だ、非常に不本意だ……と、心の中で呟いていると、イチが私のうなじに擦り寄ってきた。
「なんか……間違いをおかしそうだ」
ため息まじりに色っぽく呟かれた言葉に、私は真顔でつっこむ。
「イチ、何を言っているの?」
「いや、WD-7083型は間違えるように作られているから……」
「待って今ゾッとした、やだ、出る!」