アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
私は麦くんを好き?

生まれた時から一緒にいた彼を、急に外部の人に取られたから拗ねてるだけなのでは?

トクベツな人のトクベツになりたい、というミーハー心だけなのでは?

この気持ちを素直に好きと捉えていいのか?

色々な感情が身体中を駆け巡って、気持ちを言葉にしようとするたびに渦を巻いてぐちゃぐちゃになっていく。

暫く押し黙っていると、後頭部に回されていた手にぐっと力が入る。

「……まあ、いいや。口開けろよ、粋」

「……な、流される気がする」

「流されろよ」

「え……んっ、待……麦く……」


でも、ひとつだけ、ハッキリと言えることがある。

私は、あなたの、佐藤麦の、トクベツになりたい。

胸の中の私が、そう叫んでるの。


「麦く、苦しいよ、んっ……」

私の唇を食い尽くしているのは、間違いなくオスのあなただ。

彼は今、私を欲しがってくれているということだろうか?

それともただじゃれあっているだけなのだろうか?

まだちゃんと名前をつけていない2人分の熱を、どうやったら上手く逃がせるのか方法がわからない。

「麦くん、やめよう、ふつうたぶん付き合ってからこういうことするんだと思うよ」

「ほう、じゃあ付き合おう」

「なんかちょっと嬉しくないから、じゃあっていう言葉が良くなかったんだと思うたぶん……」

「粋ちゃんは、多分多分って濁して、自分の気持ちをはっきりさせることからいつも逃げるよね」

少しだけ笑って、麦くんが再び私の唇を甘噛みした。

うーん、さっきキスをやめようって言ったはずなんだけどなあ……、上手く伝わってなかったのかなあ……。

「どうする? また逃げる?」

疑問に思いながらキスをされていると、麦くんが唇を少し離して挑発するように問いかけた。

「……麦くんは私のこと好きなの?」

「え、好きだよ、いつも言ってるじゃん」

「うーん……、なんか響かないんだよなあ……」
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