アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
トクベツな関係2
私がちょっとズレていると知ったのは、つい最近のことであった。
ずっとじいちゃんとばあちゃんに囲まれて可愛がられて生きてきた私は(シングルマザーである母は町で唯一のスナックのママをしていて、夜はいないので殆ど祖母の家にいる)、どうやら人よりワンテンポ遅れている、らしいのだ。
町は平和だ。
嫌な思いをすることなんて、殆ど無かった。
麦くんと通っていたおんぼろ木像建築の中学校(全校生徒20人)でも、とくにいじめも喧嘩もなく平凡に過ごしていた。
ところがどっこい、高校では、“グループ”を作って、さらにそこで自分の居場所を作って行動しないといけないらしい……まさにサバイバルであった。
「粋って名前変わってるよね」
昼休み、こんな私と仲良くしてくれる友人桃子がずっと言いたかったというようにこぼした。
「そうかな、私の近所の子供の名前もっと変わってるよ、呂美雄(ロミオ)とか」
「粋ちゃん家って、あの船渡ったとこの町でしょ? 町っていうかもはや村? 島?」
未知の世界だ、とでも言うように、桃子は斜め上を見上げて想像を膨らませている。
「しっかしあんな田舎であんな麦みたいなイケメンが生まれたら取り合いで大変だったでしょ」
「ううん! 麦くんはもうパパみたいな存在で、駆けっこが一番早い坊主頭の正一くんがバリバリにもててたよ」
「足の速さでモテランキング決まるとか小学生かよ!」
桃子はかなりの衝撃を受けたのか、今日一鋭いツッコミをした。
私はお母さんが適当に買ってきてくれた市販のお弁当を食べながら、工場で働いている正一くんのことを思い出した。見せろと言われたので一応正一くんの写真を見せてみたけど、やっぱり桃子は頭を抱えていた。
あの町からこの中堅どこの進学校に来たのは私と麦だけで、通学に2時間30分かけている生徒、ということで入学前から噂されていた。桃子いわくとんだ田舎者が来るとみんな思っていたから、麦くんのように育ちの良さそうな整った顔立ちのイケメンがきてかなりどよめいたのだとか。
そんな麦くんと一緒に入学した私も、もれなく目立ってしまっているようで……。
「粋ちゃん、ちょっといい?」