アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
最後のシュウマイを食べようとしたとき、突如“派手グループ”のリーダー、さきちゃんが私の元へやってきた。
桃子はさきちゃんが大嫌いらしく、スマホをいじって完全に無視している。
「うん、でもこれ食べてからでもいい?」
「粋ちゃんさあ、麦のこと好きなの?」
「うん、麦くん好きだよ」
「だからそういうのじゃなくて……」
彼女はイライラしたように眉根を寄せたが、すぐに桃子がさきちゃんのことを睨んだ。しかしさきちゃんは更に牙を向いてきた。
「ライクじゃなくてラブってこと?!」
「う、うん、ラブな意味で!」
「は? まじ言ってんのそれ? この間は麦のこと愛犬と同じレベルにいるって言ったじゃない」
こんなに攻撃的な瞳を誰かに向けられたのは初めてだったので、私は驚いてしまった。何故今こんなにも心臓がドキドキしているのかわからない、でもなんだか少し怖い。
硬直している私のかわりに、桃子が口を開いた。
「ちょっとやめなよ、粋怯えてんですけど」
「ねえ、ラブだって言うんなら、あんたちゃんと麦とHとかできんの?」
その言葉の意味はさすがに知っていたけれど、面と向かって言われると頭が真っ白になる。
さきちゃんはうざったそうに私のことを睨みつけて静かに怒っている。
「そんなこと考えたことなかった~なんて言ったら本当殴るからね? 私あんたみたいな世間知らず、大嫌い」
それだけ言い残して、彼女は去って行った。
茫然自失としてしまった私とは反対に、桃子は顔を赤くして怒っている。
「何あれっ、気にしなくていいからね粋」
「う、うん、ありがとう桃子……」