アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
佐藤家のしきたりは未だによくわからない……もし麦君が七割取れずに予備校に通うことになったら、2時間半ものあいだ1人で帰らなくてはいけないのか……。
なんだかうまく事態を飲み込めずに申込書を見つめていると、禄さんがまた私の頭を撫でた。
「登下校寂しかったら俺が一緒に帰ってあげるよ」
「禄さんほとんど学校来てないじゃないですか……」
「あ、そうだった。じゃあ麦が予備校の時だけ、学校来ようかな」
「禄さんあと1週間で卒業ですよ……分かってます?」
「え、そうなの?」
私の言葉に少し目を見開く禄さんを見て、凄く不安な気持ちになった。この兄弟は、本当にどっかにネジを200本くらい落としてしまっているのではないか……。
「あ、そうだ、俺春から東京に住むんだよね」
「知ってますよ、寂しくなりますね」
そう言うと、禄さんはまた目を見開いた。
「なんで驚いてるんですか、私禄さんいなくなっちゃうの寂し過ぎて、サプライズでマフラー編んでたんですよ」
「もう言っちゃったからサプライズじゃないし、もらう時既に春だね」
「禄さんブランドもの大好きだから、嫌がらせにちゃっちいマフラーつけさせてやろうって思って……」
「なんてリアルに困る嫌がらせを……」
禄さんは無表情のままだったけど、なんとなく少し照れてるのが伝わった。
なんだかそれがおかしくて笑ってしまった。