アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]



「粋ちゃんはどうしてそんなに俺のツボついてくるかなー」

「話しながらボタン外さないで!」

「最近兄貴がいて粋といちゃつけなくて粋不足だったんだ、だから今は粋が我慢しようね」

はいバンザーイ、と言わんばかりに麦君がするするとネクタイとボタンを外して行く。

「粋、もう諦めろ」

もし先生が来たら……そんなことを考えるとヒヤヒヤしてしまい、私は出来る限りの抵抗を試みたが、麦君が私の首に唇を這わせて私の名前を呼んだ瞬間それを諦めた。

「んっ……麦くんっ……」

柔らかい唇が徐々に耳に移動し、鎖骨に移動し、胸に移動していく。

「麦君っ……」

「……粋に、必死に名前呼ばれるの、なんかすごく好き」

「そ、そこで、話さないで……」

「今日、白なんだね」

白のブラに指を引っ掛けて私の羞恥心を煽るように言ってのける彼の頭を、私は思い切りバシッと叩いた。
やはり抵抗を諦めない。なぜすぐに白旗をあげてしまったのだろう……今ここで彼の暴走を許したらこの先やって行けない気がする。

「抵抗諦めたかと思ったのに……」

叩かれた頭を撫でてそう呟く彼に、私は自らキスをした。そして、首に腕を絡めて純真な気持ちで問いかける。

「キスだけじゃ満たされないの?」

「ぶっ」

「……こっち向いて、麦君」

思い切り咽せて赤面していた麦君だが、私の言葉になぜか頭を抱えて「やられた……」なんて嘆いてから、少し乱暴に私の唇に唇を重ねた。

「粋、俺以外にその技使わないでよ。とくに禄!」

「な、なんで禄さん……?」

ぽかんとしていると、あーもう、と苛立った様子の麦君が、食べるようにキスをふらせた。

やっぱり麦君とキスをするのは気持ちいい……私も彼のせいでキス好きになってしまったのだろうか?

そんなことをぼんやり考えながら麦君にされるがままになっていると、彼の細い指が再び下着に侵入していることに気づいて手を掴みどかした。

「俺は多分、一生粋ちゃんに振り回されて終わるんだろうな……」

何故か絶望している彼が、顔を覆ってそう呟いた。そんなに手を無理矢理どかされたことがショックだったのか……。

そんな彼の頬にキスをして、私は少し意地悪く笑った。

「振り回された方が、離せなくなるでしょ?」

「……このやろー」

でもその通りだ、と、今度は麦君が白旗をあげた。


絶対に離さないでね。

あなたが帰ってくるまで、あなたの大好きな町で、あなたのことを待っているから。

薬指をあけて、待っているからね。



end
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