アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
この甘ったるさから抜け出すには、この欲望を断ち切るには、ひとつの質問をするしか方法は無い。
分かってる。
たったひとことだ。
分かってる。
「ほしの……、苦しくない?」
苦しいよ。
でも言えないよ。
だって、好きなんだもの、あなたが。
他の誰と付き合っても、誰とキスをしても体を重ねても、あなたが好きだという気持ちは、呪いのように消えなかった。
本当はこんなのよくない。
分かってる。
でも理屈じゃない。
体が、脳が、言うことを聞かない。
私はきっといつか後悔をする。
分かってる。うんざりするほど分かってるよ、もう。
あなたは私のことを好きにならないってことなんか、もうとっくに分かってるの。
「理人君は」
私のことをどう思ってるの?
心の中で叫んだ言葉をぐっと堪えたら、ナイフで喉を引き裂かれたような痛みが走った。
このたったひとつの質問で、8年分の想いに終わりが来る。
そう思うと、怖くて手が震えた。
「理人君は、私のこと……」
そこまで言うと、彼は私を触る手を止めて、真剣な瞳で見つめてきた。
「……星乃は、俺とどうなりたい?」
思いもよらぬ切り返しに、私は思わず言葉を失った。
まさか私に対してそんな質問をしてくるとは、夢にも思わなかった。