アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]



もうどうしたらいいのか分からない。
タイミングなんてとっくに逃してしまった、熟成し過ぎたこの想いを、どこにどうぶつけて発散したらいいのか分からない。

「私はずっと、本当はこんなの良くないって、ずっと、苦しくて、なのに、理人君に求められることが嬉しくてっ……それもまた苦しくて……っ」

私の言葉で、みるみるうちに理人君の顔が罪悪感で染まって行くのを見て、私は彼を困らせていることを実感し、胸が痛んだ。

ごめん、本当は、こんなこと、一生言うつもりは無かった。

「あなたが関西に帰ったら、また新しい恋を始めて、結婚して、いい思い出にしようと、そう思ってた……それなのに、なんでそんなこと……っ」

……ラム酒とチョコの香りが頭から離れない。私はずっと、あの甘ったるい匂いに、酔い続けたままなのだろう。
あなたという強烈に甘ったるい呪いに、かかったままなのだろう。

誰か、誰か教えて。
この人を忘れる方法があるなら、この香りを忘れる方法があるなら、誰か教えてよ。

「……俺は、星乃に泣かれると、昔から弱い……」

ぽつりと、さっきの私と同じように床を見つめたまま、彼がつぶやいた。

「星乃に彼氏ができると、不安を隠すために焦って彼女を作って、そうやって無理矢理彼女をつくると、お前は突然彼氏と別れたりするんだ……」

「え……」

「こうやって、一生タイミングが合わないまま、俺とお前は交わらずに終わって行くのか……?」

……彼の声が、珍しく震えている。

弱気な態度の彼に、私は激しく困惑していたが、私は、ゆっくり彼の手を取って、その瞳を覗き込んだ。

あなたも私と同じように、苦い思いをして恋愛を重ねてきたの?

私はもしかして、少しでも期待をしていいの?

ねえ、ちゃんと答えを聞かせてよ。

お互い怖くて確認できなかったことを、今、ちゃんとはっきりさせようよ。

覚悟を決めた私は、突拍子もない告白をした。

「……でも、私は今、好きな人いますよ」

「えっ!?」
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