アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
ぎゅっと俺の背中に腕を回す彼女を抱きしめながら、俺は15歳の時のことを思い出していた。
……ちょっと暗めの緑のチェックのマフラー。
志穂が欲しがりそうな可愛らしいマフラーを、本当はあの時俺も買ってあげたかった。
だけど明らかに女性向けのマフラーをレジに持って行くことが恥ずかしくてできなかったんだ。
結局俺は、男女兼用のようなマフラーを買ってしまった。
志穂だったら絶対に選びそうにない色だけど、それでもこのマフラーをつけてる志穂が、死ぬほど愛しかった。
「……さむいね」
抱きしめ終えて、志穂から離れると、照れ隠しに俺はそう呟いた。
「さむいね」
すると、志穂も同じように繰り返し、俺の冷え切った手を彼女がそっと優しく握った。
俺は、緑のマフラーをつけた彼女を見て、心の底から彼女を愛しく思った。
……もし緑のマフラーにした理由を話したら、君は笑うかな。
そんなことを、ぼんやり思いながら、冷え切った一本道を彼女と一緒に並んで歩いた。
end