アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]


なんだか八年前のあの時を思い出してしまい、余計に涙があふれた。

「好きになって、くれないと思ってました……」

思わず弱々しい声で呟くと、彼はバカだな、と言って、飛び切り優しいキスをしてきた。

愛が伝わるキスって、こんなにも甘くて優しくて温かいんだ。
知らなかった。

「もう一回、してください……」

「はは、お前可愛いな、ほんと」

一回だけで済まなかったらごめんと言ってから、彼はふたたび唇を重ねた。


……バレンタインが近づくと、ラム酒とチョコの匂いを思い出す。

もう一度レシピを検索して、あなたのために、8年ぶりにラムボールを作ってみようと思う。

でも、今年は、一つだけレーズンを入れてみようと思ってる。

だって、こんなに待たされたのだから、一つくらいあなたの嫌いなレーズンをいれたってバチは当たらない筈だから。

レーズン入りのラムボールを食べて苦い顔をするあなたを想像すると、少し笑えた。


「何笑ってんの、星乃」

「ふふ、なんとなく、つい」

「俺は今泣いてるから、こっち見んなよ」

「それふりですか?」

「ちげーわ、バカ」



ねえ、理人さん、それくらいのいたずら、笑って許してくれるでしょ?




end

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