アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
保坂の綺麗な指が私の髪をかきあげた。
とろんとした瞳で私を見つめながら、唇を指でなぞる。
"今"私の隣にいるのは、保坂、なのだ。
時間はもう戻らないし、私は"今"私のそばにいてくれる人と、向き合わなきゃいけないのだ。
体の中にまだ染み付いている、元彼を好きだった気持ちが、じんわりと溶けていくのを感じた。
かちこちの岩石のようだった好きという気持ちが、まるで雪が溶けるかのように、さらさらと水に戻って行く。
それは私の涙となって、頬を伝った。
ああ、好きだったな。本当に。
でも、もう、あの時の全ては過去のことなのだ。
「……悪いけど、泣くんだったら、全力でつけ込むよ」
「泣いてないっ」
忘れようと思って保坂を誘ったわけじゃない。
だけど、自宅で男と2人で飲んで、何もないわけないことは覚悟の上で呼んだ。いくら私だってそこまでバカじゃない。
何かあったらあったで、それでもいいやと思ってた。
「泣いてないっ……」
バカだな、私。
"それでもいいや"なんて、そんな風に自分を投げ出すなんて、こんなに恥ずかしくて情けないことはないよ。
"今"、私と向き合ってくれているのは誰なのか?
苦手なビールを飲み干してくれたのは、誰なのか?
苦い過去を溶かしてくれたのは誰なのか?
「びっくりするほど情がわきまくってるんですけど」
「保坂、ごめん私本当に最低なことを……っ」
「俺も最低だから、一緒だな」
彼の手が後頭部に回って、唇が重なった。
熱のこもった吐息が、体温を上昇させていく。頭の中の整理が追いつかない。私は、何がしたいんだろう。どうして今彼のキスを受け入れてしまったんだろう。どうしてなんだろう。どうでもいいやって、思ったわけじゃないのに。
とろんとした瞳で私を見つめながら、唇を指でなぞる。
"今"私の隣にいるのは、保坂、なのだ。
時間はもう戻らないし、私は"今"私のそばにいてくれる人と、向き合わなきゃいけないのだ。
体の中にまだ染み付いている、元彼を好きだった気持ちが、じんわりと溶けていくのを感じた。
かちこちの岩石のようだった好きという気持ちが、まるで雪が溶けるかのように、さらさらと水に戻って行く。
それは私の涙となって、頬を伝った。
ああ、好きだったな。本当に。
でも、もう、あの時の全ては過去のことなのだ。
「……悪いけど、泣くんだったら、全力でつけ込むよ」
「泣いてないっ」
忘れようと思って保坂を誘ったわけじゃない。
だけど、自宅で男と2人で飲んで、何もないわけないことは覚悟の上で呼んだ。いくら私だってそこまでバカじゃない。
何かあったらあったで、それでもいいやと思ってた。
「泣いてないっ……」
バカだな、私。
"それでもいいや"なんて、そんな風に自分を投げ出すなんて、こんなに恥ずかしくて情けないことはないよ。
"今"、私と向き合ってくれているのは誰なのか?
苦手なビールを飲み干してくれたのは、誰なのか?
苦い過去を溶かしてくれたのは誰なのか?
「びっくりするほど情がわきまくってるんですけど」
「保坂、ごめん私本当に最低なことを……っ」
「俺も最低だから、一緒だな」
彼の手が後頭部に回って、唇が重なった。
熱のこもった吐息が、体温を上昇させていく。頭の中の整理が追いつかない。私は、何がしたいんだろう。どうして今彼のキスを受け入れてしまったんだろう。どうしてなんだろう。どうでもいいやって、思ったわけじゃないのに。