アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「……熱い、唇」
「……保坂は、何も聞かないんだ」
「聞かないよ、過去のことだろ」
保坂の言葉は、いつも短くて鋭くて正しい。
でも、今はなんだかそのハッキリとした言葉が、心地いい。
「今お前の目の前にいるのは誰?」
「保坂……です」
「それだけ分かってればいいから」
強気なあなたの瞳が、実は少し震えていることに気づいて、私は動揺した。
「形の無い過去じゃなくて、"今"お前のそばにいる俺を見て。ちゃんと手で触れるものを信じて」
「……保坂」
「……分かった?」
「……うん……っ」
こくりと頷くと、保坂は私の頬を両手で挟んでつぶやく。
「……ああ、やっとちゃんと目が合った」
そう言って笑うあなたの優しい瞳を見たら、
"今"を見つめたら、
なんだかまた堪らなくなってしまって、
涙がこぼれ落ちた。
テーブルに置かれた料理はもう完全に冷め切っているし、ビールの泡もへたってる。
それはもう、まったく味のないものに思えた。
「はは、笹倉、今はなんの涙なの?」
「わかんないよ、でもなんか止まんないんだよ……っ」
涙を拭って、もう一度前を向いたら、
灰色だった景色に一段と映える、
鮮やかに笑うあなたがいた。
「いいよ、泣いても。俺の前なら」
……ちょっとくさいし、ありきたりだけど、
"今"を生きるってことが大切なんだと、この年にして実感してる。
もし、この人と一緒に生きる"未来"がくるのなら、
その時間を精一杯大切にしたいと、心の奥の奥で、じんわり思ったのだ。
「……保坂は、何も聞かないんだ」
「聞かないよ、過去のことだろ」
保坂の言葉は、いつも短くて鋭くて正しい。
でも、今はなんだかそのハッキリとした言葉が、心地いい。
「今お前の目の前にいるのは誰?」
「保坂……です」
「それだけ分かってればいいから」
強気なあなたの瞳が、実は少し震えていることに気づいて、私は動揺した。
「形の無い過去じゃなくて、"今"お前のそばにいる俺を見て。ちゃんと手で触れるものを信じて」
「……保坂」
「……分かった?」
「……うん……っ」
こくりと頷くと、保坂は私の頬を両手で挟んでつぶやく。
「……ああ、やっとちゃんと目が合った」
そう言って笑うあなたの優しい瞳を見たら、
"今"を見つめたら、
なんだかまた堪らなくなってしまって、
涙がこぼれ落ちた。
テーブルに置かれた料理はもう完全に冷め切っているし、ビールの泡もへたってる。
それはもう、まったく味のないものに思えた。
「はは、笹倉、今はなんの涙なの?」
「わかんないよ、でもなんか止まんないんだよ……っ」
涙を拭って、もう一度前を向いたら、
灰色だった景色に一段と映える、
鮮やかに笑うあなたがいた。
「いいよ、泣いても。俺の前なら」
……ちょっとくさいし、ありきたりだけど、
"今"を生きるってことが大切なんだと、この年にして実感してる。
もし、この人と一緒に生きる"未来"がくるのなら、
その時間を精一杯大切にしたいと、心の奥の奥で、じんわり思ったのだ。