アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
4年半前ーー
「あ、どもっす」
第一印象は顔がタイプだったので好印象だった。この人と仲良くなりたいと、高校生ながらにそう思った。
別にこれと言って面食いだったわけじゃないし、彼がとびきりのイケメンだったわけでもない。とっても好きな顔、だったのだ。
「え、折戸(おりと)さん、T女子大行くの?」
始めて話しかけられた時は、心臓が飛び出るほど嬉しかったし、ドキドキした。今まで横顔や俯き顔しか見たことのなかった彼の瞳が、まっすぐ私に向いている。
「あ、はい、推薦で受かったので……」
「へえ、俺の大学近いよ。T女子の子、俺の入ってるインカレサークルにも結構いるよ」
「えっ、もしかしてK大なんですか? こ、高学歴……」
「あーなんか、マークシート鉛筆転がして解いたらセンターで受かったわ」
「んなアホな……」
千歳さんの言うことはほとんど適当で、仕事の教え方も適当で、なのにものすごく仕事ができて、トラブルがあった時は真っ先にカバーしてくれる。そんな彼に気がある人がこのバイト先にいないわけがなく、千歳さん狙いの子は見てるだけですぐにわかった。
千歳さんはその時既にもう大学四年生で、一年浪人していたことを後から知った。鉛筆転がして……なんて言ってたのに、一年間死ぬほど勉強して努力して受かったらしい。