アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
現在――

「今彼女と付き合って3年目なんだ、最長記録」
池内君は、びっくりだよねーと言って、ビールを飲んだ。
綾瀬のゴリ押しで、池内君と個室居酒屋で飲むことになった。
一体なぜどうしてこんなことに……。頭を抱えながらレモンサワーに口をつけると、爽やかな味が口の中に広がった。
「そういえばさ、彼氏とはなんで喧嘩したの?」
「……3回連続ドタキャンされたの、デート」
「あー、ドタキャンはね~……」
仕方ないよね、という言葉を、彼は飲み込んだ様子だった。彼は忙しいし、仕方ないのはわかってる。だけど最近、なんのアフターフォローもなしにドタキャンするもんだから、怒りが頂点に達してしまったのだ。
昔はもっと謝ってすぐに変わりの日を作って、出張先でのお土産だのなんだの買ってきてくれたりしたのに。
「……長く付き合ってるとさ、安心し切っちゃうんだよね、男ってバカだからさ」
池内君はからっと爽やかに笑って、ビールをテーブルに置いた。ソフト浮気だのなんだの言うからかなり警戒してたけど、なんだ、ただの飲み友達が増えただけじゃない。千歳さんに嘘をついて男の人と二人で飲みに来たのはすこし後ろめたいけれど、これくらいならいいよね。
「やっぱりそうなんだね……、どうしたらいいんだろ」
「そんなの簡単だよ。たまにはこうやって、私のこと放っといたらどっか行っちゃうよアピールすればいいんだよ?」
「え、池内君……」
池内君の手が突然髪に触れて、優しく撫でられた。千歳さんじゃない男性の手が触れたことに、私は激しく違和感を抱いた。
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