アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
どうしてここに来てくれたの?
もしかして心配して来てくれたの?
さっきのこと、怒ってるよね。
どう謝ったらいい?
聞きたいことは山ほどあるのに、どれも言葉にならない。
ひと気のない土手沿いをひたすら歩いて私の家を目指す彼の背中は、怒ってるけど、落ち込んでいるようにも見えた。
言葉を探しながら彼に手を引かれていると、突然彼がぴたりと立ち止まった。
「……あいつが、好きなやつなのか?」
「……え?」
「……だったら別れるよ」
〝じゃあ、折戸さんに好きな人ができるまで付き合おう〟
あの時の言葉を思い出して、私は慌てて口を開いた。
「そうじゃないよっ、ただの飲み友達で……」
「じゃあなんで嘘ついた」
「そ、それは……」
思わず押し黙ると、彼は深くため息をついてから、私の腕を離した。
冷たい夜風が街をすり抜けて、川面を優しく撫でた。
かなり強引に流されたとは言え、ドキドキが欲しくて浮気しようとしました、なんて言えない。
「……まあ、いいけど、飽きたんならもう、終わりにする?」
「待っ……」
ああ、なんだそんなに簡単に、終わりにする? なんて言えちゃうんだね。私にとってこの四年はとってもとっても長かったし、大切だったよ。
でもあなたにとってこの四年は、そんなに濃いものじゃなかったのかな。
そう思ったら切なくて、何も言い訳する気にならなくなった。