アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「おかげでこっちは毎日に奈帆が染み付きまくりだよ。履修登録で毎回慎重になり過ぎてる奈帆とか、アホみたいな顔で寝てる奈帆とか、内定決まった時泣きながら電話してきた奈帆とか、挙げ句の果てに奈帆がくれたカバンで毎日出勤してるし、家に帰ると奈帆が選んだアロマの匂いでいっぱいなんだよっ、どうしてくれんだよ!」
「……そ、そんなの、私だって……っ」
「奈帆は、俺の毎日の中に、存在し過ぎた……」
千歳さん、私も、あなたと過ごした四年を忘れることなんて、考えられないよ。
きっと心にぽっかり穴が空いて、しばらくまともに生活ができないと思う。それくらいあなたは私の毎日に関わっていたから。
履修登録で騒いでも、あなたはいつも冷静に単位を計算してくれた。寝相が悪くて布団を蹴っ飛ばしても、朝になるといつもちゃんとかかっていた。内定が決まった時は嬉しくて嬉しくて親より先にあなたに電話した。あなたも泣きながら喜んでくれた。奈帆が社会人になるなんて、と、まるで親みたいに喜んでくれた。
あなたは、こんなにも私の中で大きな存在だったのに、どうして別れようなんて言えたんだろう。
「……私、最近不安だったの、千歳さんに、女の子として見られていないんじゃないかって……っ」
「……うん」
「四年経って、あんまりドキドキすることが無くなって、千歳さんのことが好きなのか、単に情がわいてるだけなのか、分からなくなった……っ」
「……うん」
「でも千歳さんがいなくなるなんて、耐えられないって分かった……っ、もう好きとかそういう次元を超えて、千歳さんがいるから毎日があるんだって、分かった……っ」
「……うん」
「ごめんなさい、千歳さんが必要です、愛しいですっ……」