アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
ーー愛してます。心から愛してます。私の毎日には、人生には、まだまだあなたが必要です。
別れるなんて言ってごめんなさい。少しのことでカリカリしてごめんなさい。
私、この四年で成長できていないし、相変わらずバカだし、ドキドキしたいって思うこともあったけど、そういえば、千歳さんのために何かをしてあげたいという気持ちは、この四年間一度も消えたことは無かったよ。
本当だよ、千歳さん。
「……もらえるぶんだけ、もらっていいって言ったよな」
「……え?」
「奈帆の人生」
涙を拭って、千歳さんの顔を見つめると、彼は真剣な表情で私を見つめ返していた。
私は、首が折れるんじゃないかってくらい首を縦に振った。
「じゃあ、ちょうだい。全部ちょうだい。覚悟できんなら、もう一度こっちおいで」
私は、差し伸べられた彼の手をすぐにとって、彼の胸に飛び込んだ。泣きたくなるほど安心する彼の香りに、私の涙腺はまた緩んでしまった。
「……奈帆、キスしたいから、顔上げて」
千歳さんの唇が優しく触れて、愛しいという気持ちが更に溢れ出した。出会ったあの時からの映像が頭の中で流れて、この人を大切にしようという気持ちが、心の奥の奥をじんわりと温めていく。
浅はかな決断をしようとした数十分前の自分を恐ろしく思うよ。
「千歳さん、かっこいい……堪らないです……っ」
「うわそれ久々に聞いたわ、嬉しいもんだね」
「千歳さんが好き……っ」
「うん、分かってるよ。分かってるから、奈帆も分かってて。俺がどんなに奈帆を好きなのか」
「はい……っ」
学生生活の四年間を、この人に捧げて良かった。心からそう思えた。そしてこれからも、この人に時間を捧げたいと思った。一緒にいたいと思った。
本当に、どっかでよく聞く言葉だけど、失ってから気づくものって、こういうことを言うんだね。
「これからも、よろしくお願いします……っ」
泣きながら頭を下げると、千歳さんは笑って私の頭を乱暴に撫でた。
その屈託のない笑顔は、出会ったあの時から変わらない。
あなたを大切にしたいと思う気持ちは、変わらないよ。
「来週デートしよう。同僚の結婚式のスーツ、一緒に選んで欲しいんだ」
千歳さんのお願いに、私は笑って頷いて、それから、久々に手を繋いで家まで帰った。
帰るまでの道のりで、私は数年前の、あの会話を思い出していた。