フキゲン・ハートビート
変なところで、責めないんだね。
いつもよけいな一言ばかりで、ヤなやつのくせに。
本当に、肝心なところでは、優しいよね。
そういうのって、ずるいよね。
むかつくよ。
半田寛人め。
「守ってくれて、ありがとう……っ」
ありがとう。
半田寛人め。
それでもなお泣きじゃくるあたしの頭を、なにかゴツゴツしたものが遠慮がちに触った、気がした。
「いいかげん泣きやめよ」
……ああ、嘘みたいだけど、気のせいじゃない。
あの寛人くんの右手が、たしかにあたしの頭の上に乗っかっている。
心地いい重みを感じる。
ちょうどいい温度が伝わる。
撫でてくれるでもなく、手のひらがただ乗っかっているだけなのに、どうしようもなく安心してしまう。
「あんなやつのために水分と塩分使うな。あとウゼェ」
「ウ……ウゼェって言うな!」
「事実だからしょうがないだろ」
なにおう。この野郎め……!