フキゲン・ハートビート


「……そ、そんなにウマイなら、アレだよ? お金払ってくれたらいくらでもつくったげるよ? なぁんて……」

「カネとるのかよ」


照れ隠しで言ったのに、寛人くんは小さく笑った。


ああ、困ったな。


ぱっちりふたえのつり目が、やわらかくすぼむ瞬間を、いとおしいって。

心のすみっこのほうで、ほんのちょこっとだけ思ってしまった。


あまりにも童顔だから悪いんだよ。

きれいな顔立ちだから、悪いんだ。


ウチのかわいいマロにチョット似てるのも、たぶん悪い。


「……ウソ。タダでいいよ」


とても小さい、情けない声が出た。


「ゴハン、あたしがつくってちゃんと食べてくれるなら。ぜんぜん、つくりにいくよ。週イチとかでさ」


キモイとか、ウゼェとか、言われるのかな。

ふつうにあっさり断られそう。


まあ、いいけど。
ジョウダンだって言えばいいし。


「……うん」

「え?」


こくんと、彼は一度だけ首を縦に振ったのだった。


「じゃあ、そういうことでよろしく」


ヨロシク、て。

拍子抜け。

なんだよ、チョット軽すぎじゃない?


「……寛人くんって、ウチのネコに似てるんだよねえ」

「は?」


だから、放っておけない。

……って、ことにしておいてほしい、いまのところは、ちょっと。

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