フキゲン・ハートビート
あきれて視線を下げる。
熱のせいでうるんだ瞳がコッチを見上げていて、どきっとした。
そういえば、普段は額を完全に隠している前髪が散らばって、きれいな顔が100%露わになってしまっている。
……ちくしょう。かわいいな。くやしいぞ。
「点滴はやだ。あの時間、暇だし」
「ハタチにもなってヤダとか言ってる場合か。いいから行くよ。引きずってでも行くからね! 車のキーはどこ?」
熱でしんどいクセに、めいっぱい不機嫌そうな顔をして、寛人くんはそっぽを向いた。
「はいそこ無視しない!」
「あー、うるせーな。おまえなんか呼ぶんじゃなかった……」
本当だよ。
もしあたしが来てなかったら、きっとコイツは一晩中ひとりで高熱と闘っていたんだ。
そう思うとぞっとした。
この男は、ある日突然ポックリ死んでしまうんじゃないかって、バカみたいだけど、けっこう真剣に恐ろしくなった。