フキゲン・ハートビート


頬や首筋を触ってみる。

きのうほどの高熱はもうなさそうだけど、やっぱり少し火照っていて、一晩ではそうそう下がりきらないか、と思った。


それに、熱って夕方にまた上がってくるんだっけ?

それならきょうも大事をとって安静にしたほうがよさそうだな……。


ふいに、その眉間にぐっと皺が寄った。


「……ん」


小さく声を漏らした寛人くんが、やがてだるそうにまぶたを持ち上げる。

眩しいのか、眠いのか、いつもの半分も目があいていない。


「……一晩中、そこ?」


オハヨウもなしに、彼はいきなりくぐもった声で言った。

単語しかなかったけど、意味はわかった。


「うん。あたしもいつのまにか寝落ちてたみたい」

「ああ……そっか。ごめん」


なんか、子どもみたい。


素直にそういうふうに言われるとは思っていなかった。

そんなに申し訳なさそうな顔をされるとは思っていなかった。


ごろりと体勢を変えこっちを向いた彼の、寝起きでも美しい顔が目の前に迫っている。


「でも、すげー楽になった。……ありがとう」


申し訳なさそうな、恥ずかしそうな、
ちょっとゆがんだ笑みを彼は浮かべた。


それと同時に、ぎゅ、と。

なおもつながったままの手のひらに、かわいい圧力を感じた。


ああ、どうして離そうとしてくれないんだろう。

どうしてあたしも、離す気が起きないんだろう。

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