フキゲン・ハートビート
なぜあのユカっぺがヒロチャンの家に来ているのか、とか。
つまりヒロチャンとユカっぺはどういう関係なのか、とか。
そういうことを考える時間など、あたしには一瞬たりとも与えられなかった。
「ねえ、なんでヒロちゃんの家から出てきてんの? 業界人? それとも一般人?」
「いや、あたしは……その、中学の同級生? でして……」
「ユカは、“タダの”中学の同級生がなんでここにいるのかって聞いてんだよぉ?」
近い近い近い!
コワイコワイコワイ!
なまじ顔がものすごくカワイイのが、もうサイコーにコワイ。
「……ええと、ユカっぺは、寛人くんの……ええと?」
「カノジョだよ!」
「ひっ」
ウソでしょ、なんということなの、あの寛人くんとあのユカっぺが、マジか、マジか。
「……と、言いたいところだけどぉ。もう別れてるから、いまは、“元カノジョ”」
イマとか、モトとか、
こちら側からすれば、もはやそんなのは関係ない領域だ。
ああ、ダメ。
頭がショートしそう。
ゼンッゼンついていけていない。
「あのね、いまは、ユカの片想いなの」
切なそうに目を伏せたユカっぺに、心がぎゅっと縮まる感じがした。
アイドルでも恋をするんだな。
切なく片想いをしたりするんだな。
そして、そういうユカっぺは、テレビで見るよりも数倍かわいいな。
「だから、ヒロちゃんに近づく女は全員消す」
……いや、やはりサイコーにコワイけど。