フキゲン・ハートビート


なんか、ああ、つきあっていたんだな、って、思った。


不機嫌なんだけど、怒らずにちゃんと諭す寛人くんと、しゅんとしながらもそれを素直に聞くユカっぺ。

ふたりのあいだにはそういう、できあがった関係があるんだなって。


でも、いまは別れちゃっているんだっけ?

どうしてだろう。
ふつうに、仲良さそうに見えるのにな。


……まあ、あたしにはいっさい関係のないお話なのですが。


「ていうかヒロちゃん、病気なの? お熱でた? しんどいの?」


寛人くんの様子から咄嗟にそういうのを感じ取れるあたり、元でも、さすがカノジョだなって思う。


「あー、うん。ちょっと。たいしたことねーけど」


嘘つけ。
きのうあんなにゼェゼェ苦しんでたのはどこのどいつだ。

かっこつけてんじゃねーよ。


「ねえ、なんですぐユカに連絡くれないの!? いつも言ってるよね、なんかあったら絶対ユカに頼ってって」


ぎゅ、っと。寛人くんの服を掴んで必死に訴えるユカっぺは、本当にこの男のことを好きなんだな、と思った。

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