フキゲン・ハートビート
「……そういうことなら、言ってくれたら、よかったのに」
線が細く、男の子にしては少し背の低い寛人くんと、アイドルらしい小柄なユカっぺ。
しかもどちらも、コワイくらい顔が整っているわけで。
そんな、すべてが完成されたようなふたりといっしょにいることが、突然死ぬほど恥ずかしくなった。
「も~! 看病してくれる子がいるなら、そう言ってくれたらよかったのに。あたしみたいなのがしゃしゃり出てバカみたいじゃんねえ。あ、でも相手があのユカっぺなんだから、言えないか」
うわ、なに笑っているんだろう、あたし。
きっといま最高にキモイ笑顔をしているはず。
なんていうか、すごく、消えたい。
「ユカっぺも、あらぬ誤解をさせてごめんなさい」
「え……」
「あたしは本当に“タダの”同級生だから、心配しないで。あと、すごく応援してるので、アイドル活動がんばってください」
ユカっぺはなんともいえない顔をしていた。
戸惑っているような、安心したような。
でもやっぱりそれでもいろいろ疑っているような。
それでも、寛人くんのことは見れなかった。
「じゃ、今度こそほんとに帰るね」
「蒼依」
「あ、寛人くん、お大事にね」
もう、やんなっちゃうな。
人のこと夜通し看病した結果、恥かくことになるなんて。
本当に最低の結末だ。
逃げるように、早足でマンションを出た。
パンプスじゃなくてスニーカーにしたらよかったかな。
歩きづらいったらしょうがない。
あーあ。
早くシャワー浴びて、もう、寝てしまいたい。