フキゲン・ハートビート
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  ☔︎


もう二度と会うことはないんだろうと思っていた。

というか、むしろ、死ぬまで二度と会いたくなかった。


「――蒼依」


新奈と洸介先輩のデートの日。

日曜なので学校もなく、バイトもお休みをもらっていたので、特手持ち無沙汰で。

夕方、近くのスーパーにアルコールを買いに行こうかと、ドすっぴんでマンションを出たところに、そいつはいた。


「え……」


本当に忘れたころにやって来やがる。

大和は、きょうもへらりとした笑顔をその顔面に貼りつけながら、軽く右手を挙げているのだった。


「なんだよ、そのカッコ。しかもすっぴんじゃん。コンビニ行くの?」

「……あんたってマジでウザイね」

「冷てーなあ」


だって、しょうがないじゃん。
ウザイんだもん。


メッセージのアプリもブロックして、電話番号も着拒して、こいつの住んでいる場所にもなるだけ近寄らないようにして。

こんなにわかりやすく、あからさまに、徹底的に拒否しているというのに、まだ会いにくるのかよ。


「ほんとさぁ、大和ってどうかしてるよ」


思わず笑ってしまった。
うっとうしすぎて、もはや笑えた。

同時に、笑えるくらいには、もう傷が癒えているのだと実感した。


「……蒼依、俺のこと、もうどうでもよくなったんだな」


大和が眉を下げて笑う。


「まあ、とっくに、どうでもいいよね」

「だって、前に会ったときは泣いてただろ。なのにもう、ひとつの動揺すら見せてくれねーんだなって。ちょっとサミシーよ」


ウルセェ、くたばれ。


二股かけた挙句、アッサリ捨てた女にノコノコ会いに来て、よくそんなことが言えるものだね。

アタマと下半身の病気なんじゃないの。


「おまえって、強い女だよ。……女は、強いよなあ」


それでも、オレンジの西日を受けて輝くその横顔は、あのころとなにひとつ変わっていなくて、あわてて目を逸らした。


どうしても……どうしても、

油断したら、いまでもすぐに引きずりこまれそうになってしまうのも、また事実。

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