フキゲン・ハートビート
何度も、何度も。
角度を変えてぶつかるそれは、まるで波に飲みこまれるみたいに、だんだんと深くなっていく。
涙に濡れたまぶたを閉じ、いつしかあたしはその細い首を抱きしめていた。
隙間から吐息が漏れる。
もうどちらのものかもわからないけれど。
離れても、またぶつかって。
何度だってぶつけあって。
触れた瞬間から、急くようにくちびるを割って、お互いの熱を持ち寄った。
それでも、決して乱暴じゃない、優しくて穏やかなキスだった。
半田寛人はこんなふうに女の子に触れるんだ、って。
ふやけた脳ミソでぼんやりそんなことを考えているうちに、気付けばふたり重なったまま、ベッドに倒れこんでいた。
なんの迷いも、疑問もなかった。
恐怖も羞恥心も、うしろめたさも、そういうのは、なにひとつとしてなかった。
しばらくのあいだ無言で見つめあった。
それを、とても神聖な時間みたいに感じた。
寛人くんは切なそうな顔をしている。
いつもの不機嫌なのとは違う、すごく苦しい顔だ。
彼はなにかを言いかけて、
でも、またぎゅっと口を結んでしまった。
あたしはいまどんな顔をしているんだろう。
泣きはらしたし、きっとヒドイ顔なんだろうな。