フキゲン・ハートビート



翌朝、目を覚ましても、寛人くんは隣で眠ったままだった。


本当に、息をのむほどに、美しい生きものだ。

昨晩、月明かりの優しい白に照らされていた肌はとても美しかったけど、朝日のまぶしい白も、すごくいいな。


横になったまま、手を伸ばして頬に触れる。

無意識に、指先でなぞってしまう。

いい曲線。
完成された曲線だ。


その輪郭を指の腹でくり返し撫でていると、やがてそのつり目がぱちっと開いて、


「いつまで触ってんだよ」


と、少しだけ笑った。


なんだ、起きてたのかよ。
いつから起きてたんだよ。

恥ずかしいじゃんか。


「……ねえ、寛人くん」

「うん」


あたし、ユカっぺに、ただの同級生だと言ってしまった。

だから安心して、と。


それなのに、軽率にこんなことをして、また誰かの気持ちを踏みにじってしまったんじゃないのかな。


ああ、どうしてこうも、バカなんだろう。

どうしてこうも、いつも、弱っちいやつなんだろう。


「……また、よけいなこと考えてるだろ」


言うと同時に、寛人くんは優しい強さであたしを抱き寄せた。

小さくて細い男だと思っていたけど、あたしなんかすっぽり包みこんでしまうくらいには、半田寛人も、ちゃんと、男の子なんだな。


それは、眠りにつく前、夜通しずっと感じていたことだ。


「なにも心配しなくていい。全部大丈夫だから、まだ寝てろ」

「……うん」


頬を寄せると、答えるように頭を撫でてくれた。

その手つきが心地よくて、目を閉じると、すぐに深い夢のなかに落っこちた。


あったかい。

あったかくて、安心する。


寛人くんは、見かけによらず、とてもやわらかいにおいがする。




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