フキゲン・ハートビート
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  ☔︎


いつもと同じ、窓際の席。

すっと鼻筋の通った、圧倒的な大人の横顔を、マグカップから立ちのぼる湯気が白く、淡く、ぼかした。


「お待たせいたしました、ホットコーヒーです」

「ありがとう、蒼依ちゃん」


10月の陽の光が窓から柔らかに差しこんで、その上品な顔を照らしている。

このなごみ顔も、なんだか久しぶりに見る気がする。


「なんか久しぶりだね」


あたしが思ったのと同じことを、彼のほうが先に言った。

マグカップをそっと口元へ持っていきながら、俊明さんが優しく笑む。


「準備のほうはもう落ち着いたんですか?」

「うん、さすがにね。あとは発売を待つだけ」

「うわー、お疲れさまです! アルバム楽しみだなあ」


そうなのである。

来月の頭、なんと、あまいたまごやきの最新アルバムが発売するのである。


しかし、半田寛人という男がそんなことを積極的に教えてくれるはずもなく、発売の件は、ネット通販サイトのオススメ商品のメールではじめて知った。

なんで言わないんだ、と問いただすと、聞かれてないから、とかわいくないせりふ。


それでも思い返してみれば、あの不機嫌なネコ顔も、最近はなにかと忙しそうにしていた気がしなくもない。


「ヒロもなにかと忙しそうにしてただろ?」

「えっ!」


びっくりした。

さっきから、考えていることをすっかりそのまま読まれているのかと思う。

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