フキゲン・ハートビート
「そういえば、聞いたよ」
漫画みたいに心臓がドッキーン!と鳴った気がした。
聞いたって、なにをですか?
寛人くんとあたしのワンナイト・チョメチョメのことですか?
もしや全部、俊明さんには筒抜けなんですか?
「ユカに会ったんだって?」
「え、……あ」
なんだ、ソッチか。
「はい、けっこう前に一度だけ、それもほんのちょっとですけど……。本当にかわいくてビックリしました」
いまでも鮮明に思い出せる、あの完璧にかわいらしい、ザ・アイドルなお顔。
「いやいや、可愛いだけじゃなかったでしょ」
「う……あの、すみません、はい」
思わず素直に頷いてしまったあたしに、俊明さんがめずらしく声を上げて笑った。
「そうだよな、ごめん。鉢合わせたのがヒロの家なら、なおさら大変だったと思う」
俊明さんは全部お見通しってふうに、口元に指を当てながらくすくす笑っている。
でも、そのなかにはやはりたしかな申し訳なさみたいなのが滲んでいて、なんだか寛人くんの……ふたりの、保護者みたいだと思ってしまった。