フキゲン・ハートビート
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☔︎
目の前でぐつぐつ煮える鍋は、灼熱でも天国のよう。
野菜たっぷりの寄せ鍋。
野菜が安かったのと、きょうはちょっと肌寒かったので、このメニューにした。
「いっただきまーす!」
そういえば今シーズンはじめてのお鍋。
やっぱりなんだかお鍋って特別な感じがして、わくわくしてしまう。
お箸で鍋をつっつき、まずお肉を口へ運ぶと、白い湯気のむこう側にぼんやりと細い男が見えた。
おや、箸が動いていないようですが。
「食べないの?」
「いや……食うけど」
「早く食べなよ。あたし早食いの大食いだから、ボケっとしてるうちになくなっちゃうよ」
「どんだけ食うつもりだよ」
自分で言うのもなんだけど、あたしの胃袋はわりかしブラックホールだと思う。
けっこうまじめに、際限なく入ると思っている。
「……あ。もしかして、鍋とかダメなタイプだった?」
たまにいるじゃない? そういうケッペキのやつが。
「みんなで同じ鍋つっつくとか無理~、みたいな」
基本的に、夕食のメニューを決めるときは、なにを食べたいか、寛人くんにあらかじめ聞いている。
いっしょにスーパーへ行き、食材を選びながらふたりでグダグダと相談することもある。
明確な提案をもらえるときもあるし、ないときもある。
きょうは、ない日だった。
だから勝手にあたしが寄せ鍋に決めてしまったのだけど、もしかしたら、この神経質野郎には、お気に召さなかったのかもしれない。
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目の前でぐつぐつ煮える鍋は、灼熱でも天国のよう。
野菜たっぷりの寄せ鍋。
野菜が安かったのと、きょうはちょっと肌寒かったので、このメニューにした。
「いっただきまーす!」
そういえば今シーズンはじめてのお鍋。
やっぱりなんだかお鍋って特別な感じがして、わくわくしてしまう。
お箸で鍋をつっつき、まずお肉を口へ運ぶと、白い湯気のむこう側にぼんやりと細い男が見えた。
おや、箸が動いていないようですが。
「食べないの?」
「いや……食うけど」
「早く食べなよ。あたし早食いの大食いだから、ボケっとしてるうちになくなっちゃうよ」
「どんだけ食うつもりだよ」
自分で言うのもなんだけど、あたしの胃袋はわりかしブラックホールだと思う。
けっこうまじめに、際限なく入ると思っている。
「……あ。もしかして、鍋とかダメなタイプだった?」
たまにいるじゃない? そういうケッペキのやつが。
「みんなで同じ鍋つっつくとか無理~、みたいな」
基本的に、夕食のメニューを決めるときは、なにを食べたいか、寛人くんにあらかじめ聞いている。
いっしょにスーパーへ行き、食材を選びながらふたりでグダグダと相談することもある。
明確な提案をもらえるときもあるし、ないときもある。
きょうは、ない日だった。
だから勝手にあたしが寄せ鍋に決めてしまったのだけど、もしかしたら、この神経質野郎には、お気に召さなかったのかもしれない。