フキゲン・ハートビート


「あくまでも寛人くんは“同級生の男の子”で……そういうのは本当に、いっさいないです」

「ふうん。なるほどな、そっかそっか、ならよかった」


金色の髪を揺らしながら、きれいな顔が満足げに縦に動いている。

顔立ちは寛人くんとよく似ているけど、ぜんぜん違っていると、いまは感じる。


声、しゃべり方、雰囲気、
どれもこれも、なにをとったって、むしろ、まるで対極、正反対だって。


どうしてだろう?

中学のころは、再会したばかりの春は、ふたりのことをあんなに似ていると思っていたはずなのに。



「よかった」


アキ先輩はもういちど言った。

噛みしめるみたいな言い方だった。


「こんなさ、拉致みてえな、尋問みてえなことしてごめんな?」


ぼけっと見つめていると、その美しい顔は表情をへにゃっと崩し、少し困ったように笑った。

中学のときとはうって変わり、うんと大人っぽくて、優しい笑顔。


不覚にもちょっとどきっとしてしまう。

この人の持つ破壊力は本当に計り知れないな。


反射的に、ぶんぶん首を横に振った。


「もう、ぜんぜん! お肉もおいしいですし!」

「あはは! 肉な! ドンドン食ってー」


同時に焼きたてのホルモンが白い小皿にやってくる。

いいにおい。
味も、スッゴクいい。

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