フキゲン・ハートビート
ぎりぎりまで服装に迷い、部屋でひとりファッションショーをくり広げまくった挙句、最初のパンツスタイルに落ち着く。
女子の着替えなんてこんなものである。
水色の短めのニットに、黒のタックパンツ、水色のパンプス。
そこにクラッチバッグとチェスターコートだけを持って、そわそわしながら会場へ向かった。
「あ、アオイ~! こっち!」
ミナミとアヤはもう来ていた。
当時、仲良くしてた男子たちも、その傍にいた。
みんな、すっかり落ち着いていたり、でも相変わらずだったりで、瞬時にものすごいなつかしさがこみ上がる。
シャンパンを渡された。
ビールがよかったなあ、とオヤジみたいなことを考えつつ、金色に揺れるそれをぐいっと飲んだ。
「お。アオイってけっこう飲めるほう?」
「いやー、ぼちぼちだよ」
「嘘こけ、そんな飲みっぷりしやがって。なあ、今度アオイが地元帰ってきたらさ、オレらだけで飲み会しね?」
「おーいいねー! んじゃ、幹事は言い出しっぺのトモヤな!」
「ぎゃはは、マジかよ! めんどくせーな!」
ああ、なつかしい、この感じ。
まるで中学のころにタイムスリップしたみたい。
そういえばこのメンバーでプールに遊びに行ったこともあったっけ。
あとは、地元の夏祭りも、みんなでまわったりね。
当時、アヤがトモヤのことを好きで、ミナミとあたしはくっつけようと必死だった気がする。
いつもうるさかった。
いつも楽しかった。
いつも笑っていた。
中学生の寛人くんにとって、中学生のあたしは、そういう印象だったのだろう。
そりゃ、ウゼェとか、ウルセェとか、言われてもしょうがない。