フキゲン・ハートビート


ぎりぎりまで服装に迷い、部屋でひとりファッションショーをくり広げまくった挙句、最初のパンツスタイルに落ち着く。

女子の着替えなんてこんなものである。


水色の短めのニットに、黒のタックパンツ、水色のパンプス。

そこにクラッチバッグとチェスターコートだけを持って、そわそわしながら会場へ向かった。



「あ、アオイ~! こっち!」


ミナミとアヤはもう来ていた。
当時、仲良くしてた男子たちも、その傍にいた。

みんな、すっかり落ち着いていたり、でも相変わらずだったりで、瞬時にものすごいなつかしさがこみ上がる。


シャンパンを渡された。

ビールがよかったなあ、とオヤジみたいなことを考えつつ、金色に揺れるそれをぐいっと飲んだ。


「お。アオイってけっこう飲めるほう?」

「いやー、ぼちぼちだよ」

「嘘こけ、そんな飲みっぷりしやがって。なあ、今度アオイが地元帰ってきたらさ、オレらだけで飲み会しね?」

「おーいいねー! んじゃ、幹事は言い出しっぺのトモヤな!」

「ぎゃはは、マジかよ! めんどくせーな!」


ああ、なつかしい、この感じ。
まるで中学のころにタイムスリップしたみたい。


そういえばこのメンバーでプールに遊びに行ったこともあったっけ。

あとは、地元の夏祭りも、みんなでまわったりね。

当時、アヤがトモヤのことを好きで、ミナミとあたしはくっつけようと必死だった気がする。


いつもうるさかった。

いつも楽しかった。

いつも笑っていた。


中学生の寛人くんにとって、中学生のあたしは、そういう印象だったのだろう。

そりゃ、ウゼェとか、ウルセェとか、言われてもしょうがない。

< 270 / 306 >

この作品をシェア

pagetop