フキゲン・ハートビート


「……よくやるよねえ」


当時からもともとドライっぽかったミナミが、隣で苦笑を浮かべながらぽろりとこぼす。


「あの女子たち、ミーハーにも程があるね? 中学時代、ハンダとしゃべったこともなかろうに」

「うん……たしかに、ね」

「ま、ハンダもハンダだけどさ。ちょっとは愛想よくしたらいいものを」


寛人くんと再会したばかりのころのあたしと同じことを、ミナミが言ったので、少しだけ笑ってしまった。


「あ~。この調子だと山崎ケンタの話聞くのは無理そうだなー」


反対側で、アヤが心から残念ってふうに、ため息まじりに嘆いた。


相変わらずちょっとばかしおバカで天然キャラのアヤが、いつまでも好き。

いつも天然発言を炸裂させて、こんなふうに場をなごませてくれる。


そこで、男子たちがみんなの分のシャンパンを新しく持ってきてくれた。


ウルセェことに変わりはないけど、気のいいやつらなので、下心はひとつもなしに「ハンダともしゃべりてえのにな」と言う。

なんだかそれが、ぜんぜん部外者なのに、ほんのちょっと、うれしかった。



寛人くんは、この会場のどこへ消えてしまったのだろう。


まだなお必死で探してしまう自分が恥ずかしい。

それでも探しに行こうとはしない自分が、もっと恥ずかしいし、情けない。

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