フキゲン・ハートビート
「――つーか、半田寛人、なにあれ?」
さっきまで愛想を振りまきながら寛人くんを囲っていた女子たちが、すぐ近くでぴしゃりと言った。
悪意があるとハッキリわかる声だった。
「態度悪すぎじゃん? コッチはせっかく仲良くしてやろうと思ってるのにさあ」
「中学のころ友達いなくていっつもボッチだったくせにね」
「ゲイノウジンだからエラぶってんじゃない? アレだよ、事務所が~みたいなやつ」
「ぎゃはは! うける」
は?
ひとつもうけねーよ。
「……ごめん。ちょっと、これ持っててくんない」
「アオイ……? え、ちょっと、アオイっ」
ぐい、と胸元にシャンパングラスを押しつけられたミナミが焦ったように言う。
でも聞こえていないふりを決めこんだ。
実際、たぶん、あまり聞こえていなかった。
すぐ傍にいたそのケバイ顔面の前までドカドカ歩みを進める。
仁王立ちで目の前に立ったあたしを認識すると、彼女たちは笑うのをぴたりとやめ、なんだって感じにこっちを見た。