フキゲン・ハートビート
「あんたってほんとに、ほんっとうに、ヤなやつ……!」
心の叫びが思わず漏れてしまった。
同時に勢いよく立ち上がったわたしを、アキ先輩たちがちらりと見たのがわかった。
「……知ってるよ。うるせーな、早くアッチ行けよ」
それでも半田くんは面倒くさそうに言う。
その童顔にゼンゼン似合わない低い声で。
アッチって、たぶんアキ先輩たちのほうのことだ。
……ああ、どうして、こんなにヤなやつなんだろう。
なんでなにも言い返してこないの。
どうしてそうやって閉ざしてしまうの。
「……ッだからあんたは友達できないんだよ!」
半田くんはもうなにも言い返さなかった。
かわりにイヤホンを装着して、ふいっと顔を背けただけ。
やっぱりヤなやつだ。
どこまでも性格の悪い男だ。
無愛想で、口を開けばむかつくことばかり言って、自分以外みんな見下したような顔して。
ヤダって、きもちわりいって、なんだよ。
うるせーとか言うなよ。
悪かったな、うるさくて。
中学時代からなんにも変わらない。
絶対に仲良くできない。するもんか。してもらわなくてけっこう。
そこでちょうど最寄り駅についたので、アキ先輩やみなさん挨拶だけして、電車を飛び降りた。
アキ先輩は最後まで申し訳なさそうにしていた。
それを見て、あたしのほうが申し訳なくなった。
ライブで楽しかったのが最高に台無し。
そう思いながら改札をくぐるとき、なんともやりきれない気持ちになった。
だって、ICカード、半田くんが買ってくれたものだ。
なんてこった。