フキゲン・ハートビート


汚くてせまい居酒屋の、窮屈な座敷席。

同窓会の立食パーティーとはまるで正反対の場所。


大ジョッキ、生ビールで盛大な乾杯をしたあと、すぐにみっちりコトの説明をさせられた。

最初から最後まで。

ほとんど、あたしがしゃべった。

スゴイ居心地悪かった。

隣の寛人くんはその100倍くらい、居心地悪そうにしていた。


でも、そう、しゃべったんだ。いろんなこと。

みんなと、寛人くんが、ふつうにしゃべっていたんだ。


中学時代の話もした。

ああ、そうか、共通の話題がないわけじゃないんだって、もうとっくに知ってたはずのことを、はじめて実感してしまった。

体育祭も、文化祭も、あたしたちはあのころたしかに、いっしょにしていたんだもんね。


あのときセンセーすげえ怒ってたよなとか、体育祭でカズキ公開告白してたよなとか。

そういうささいな、でもかけがえのない同じ記憶を持っていることが、なんだかとてもうれしかった。


なぜかあたしが泣きそうだったよ。

たぶん、チョット泣いてしまった。

お酒が入るとダメだね。


最終的に寛人くんは、酔っぱらいたちにメッセージのアプリをインストールさせられていた。

その瞬間、そのメンバーでの、謎のグループトークが誕生した。


またみんなで飲もうなって言われたネコ顔は、面倒くさそうに、それでもまんざらでもなさそうに、小さくうなずいていた。

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