フキゲン・ハートビート


「おれが選んだんだから似合ってるに決まってるだろ」


でも、こういうところね。

本当にダメ。

もう、慣れない。

こんちくしょう。


「も、もう……」

「おまえってけっこうすぐ照れるよな」

「違うから! そういうんじゃないですからね!」

「あ、そ」


逆にあなたはまったく何事にも顔色を変えませんね。


普段から、そう。

あたしがなにをしても、なにを言っても動じなくて、スッゴイくやしい。


それどころか、結局いつもあたしのほうが自爆する羽目になるので、たまに腹が立つ。


「寛人くんもさー、たまには『蒼依はなに着てもかわいいよ』くらい言ってくれたってよくない?」

「蒼依はなに着てもかわいいよ」

「ウッ……!」


ハイ、また、自爆。



そんなこんなで小1時間ほど走り、やがて車は、横浜よりも少し西に入ったところで停まった。


目の前に広がる景色にア然。

だって、信じられないほどキレイな式場だ!


ぐるっと緑に囲まれた小高い丘の上に立つ、ゲストハウス。

建物は、360度すべてから光が差しこむようなガラス張りになっていて、アキ先輩とみちるさんにぴったりだ。


きょうをずっと楽しみに思っていたけど、ますます楽しみになってきた。

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