フキゲン・ハートビート


中学時代、アキ先輩を知らない生徒は、たぶんどの学年にもひとり残らずいなかった。


派手な見た目に、きれいな顔。

おまけに行動も目立っていたから、いい意味でも、時には悪い意味でも、彼はいろいろなところでよく話題に上がっていたと思う。

あたしはふたつ下の学年だったけど、ウチの学年の女子はほとんどみんなアキ先輩に憧れていたし、本気で彼に恋をしていた子もチラホラいたような。


当時から、なんかものすごいオーラのある人だなあ、とはつねづね思っていた。

でも、まさか本当に“芸能人”になってしまうなんて、正直思っていなかった。



「ほな、洸介(こうすけ)も蒼依の先輩なん!?」


新奈が興奮したように身を乗りだす。鼻息がすごくて笑える。


「うん、そうだよ」


洸介、というのは、“あまいたまごやき”のギタリストで、中学校ではアキ先輩の親友だと言われていたポジションの人。

とはいえ、洸介先輩はアキ先輩と違ってあまり目立つタイプではなかったはず。


どちらかというとコワイって印象が残っている。

元気にしゃべっているところとか一度も見たことがないし、まず、そんなの想像すらできないし。


ただ、いつもアキ先輩といっしょにいたから、洸介先輩もやっぱり同じように有名人ではあった。

< 5 / 306 >

この作品をシェア

pagetop