フキゲン・ハートビート
「ちなみにドラムの半田寛人とは同学年で、同じクラスになったこともあるよ。中3のときだったかな」
「あー、そっかそっか! アキくんの弟やもんな! クラスいっしょとかヤバイやん。仲良かったん?」
「あーもうゼンッゼン。あいつホント見た目通りの性格してるかんね?」
いつも仏頂面の、無愛想。
単にそういう顔というわけでなく、蓋を開けずとも、中身も本当にそうなのだ。
イチからヒャクまで思い返してみても、半田くんってなにひとつ良い印象がない。
実は、中学3年の1年間、同じ委員会だった。美化委員。
でも、話したのってたぶん、一言、二言ぽっちだけ。
とにかく常に“話しかけんな”というオーラが出まくっていて。
むこうも関わってこないし、こっちからも絶対に関わりたくないというか。
なんだろうな。
兄弟のくせに、アキ先輩とは大違いのやつだったな。
“あまいたまごやき”は、メンバーの全員が高校生以下のときにデビューしたから、つまりもうそのころには半田くんは“芸能人”だったわけで。
決して彼がお高くとまっていたわけではないと思う。
ただ、やっぱり学校のなかで半田くんはどこか浮いていたし、本人も周りと距離をとるようにしていたんじゃないのかな。
そういえば半田くん、中学のころから校則違反のピアスをあけていたりもしてね。
それ以外にもいろいろと、涼しい顔してやりたい放題の男だった。
頭が良くて成績も良かったし、進路なんかほぼ決まっているようなものだったから、先生たちもなにも言わなくて。
いや、彼がなにも言わせなかった、というほうがしっくりくるかも。
そんな男だったから、“バンドマン”という仕事、半田くんにすごくお似合いなのは間違いないと思っている。