フキゲン・ハートビート


「へえ、そうなんやぁ。ま、たしかにアキくんと違って、チャンヒロはいっつもむすっとしてるもんな。でも中学同じやなんてめっちゃええなあ、蒼依」


新奈がウットリした顔を浮かべた。


「そうかなあ。べつにたいして親しかったわけでもないし、なにかイイってわけでもないよ」

「それでもうらやましいで! だっておんなじ学校に洸介がおるわけやろ? きっとかっこいい中学生やったんやろな~……」


そうか、新奈は洸介先輩のファンなのか。

先輩のことを友達が呼び捨てしているというのはなんだかヘンな感じだ。


「それやったらなおさら、蒼依もライブ行こ! な!」

「まあいいけど、あたしがいっしょに行ったからって洸介先輩と知り合えるわけじゃないからね」

「もー。そんなん言われんでもわかってるしぃ」


ほんとかな。

新奈のことだからどうせ、あわよくば……なんて心のどこかでひそかに思っているはずだ。


それにしても彼らのライブに行くのっていったいいつぶりだろう。


実は何度か友達に誘われて行ったこともあるのだ、“あまいたまごやき”のライブ。


あたしが中学生で、あまいたまごやきがインディーズバンドだったころ。

まだ彼らが地元でCDを手売りしていたころだ。


アキ先輩は当時からキラキラしていて、半田くんはそのうしろでむすっとしたままドラムを叩いていたっけ。

学校で見る顔とまったく同じで、やっぱりちょっと感じ悪かったのを、なんとなく覚えている。




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