フキゲン・ハートビート


ヒロトクンって、イイやつなのかも。
イメージよりずっと優しい男なのかも。


きっと本当にたくさんの迷惑をかけた。
それなのに、メチャメチャお世話になった。

中学のころ、あたしはたぶん、かなりイヤな態度をとっていた。


それでも、またなって、言ってくれた。

仲直りできるといいなって、ちょっとだけ笑ってくれた。


「……服、いいにおいだな。捨てらんないよ」


遠ざかっていくふたつの赤いテールランプを見つめながら、くすぐったいような、あったかいような気持ちがする。


あたしたち、いまからでももしかしたら友達になれるかも、って。

厚かましくそう思ってしまっても、いいのかな。




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