フキゲン・ハートビート
「もちろん来てくださるまで待つつもりでしたよ! 俊明さん、きっとお忙しいと思いますし……」
「蒼依ちゃんってしっかりしてるよな。聞かなかった俺の落ち度なのに、ごめん、ありがとう」
「そんな、あたしの服ですし、わざわざ持ってきてくださるんですから当たり前です」
胸の前でブンブン手のひらを振りまわしていると、彼は声を上げて笑った。
「そんなにカタい口調じゃなくてもいいよ。蒼依ちゃんが気にならないならタメ口でも、俺は全然」
さすがにあたしのほうはゼンゼン気になるんですけど……!
あからさまにそういう顔をしてしまっていたのか、俊明さんはもういちど軽快に笑い、「無理しなくてもいいよ」と言った。
こういうさりげない一言がやっぱり違うよな。
誰と、とは口が裂けても言わないけれど。
「……あ。注文、どうされますか? それともきょうは服だけで……」
「いや、せっかくだし、一杯コーヒーいただいてもいい?」
容姿、言葉遣い、心配り、まなざし。
この人は、どこの部分を切り取っても、いつでも恐ろしいほどに完璧だ。
さぞおモテになるのだろうな。
節々に感じます。