フキゲン・ハートビート
でも、これはちょっと、不安要素も少なくないかもしれない。
「……あの。勝手にそんなことして、怒られないですかね」
だって相手はアノ半田寛人だゾ。
それに、いまどきメッセージアプリもやらないって、人とつながりたくないからなんじゃないの。
せっかく多少くらいは仲良くなれそうカモと思ったところなのに、これでまた嫌われてしまったら、それは少しだけ切ない気もする。
「絶対怒らないと思うよ。ほかの誰かならまだしも、相手が蒼依ちゃんなんだし」
「ええ……? いやあ、あたしだからこそマズイんじゃ……いろいろ、容赦なさそう……」
自分で言っていて情けなくなる。
おかげさまで、語尾が消えてなくなってしまった。
「そんなことないよ。ヒロは蒼依ちゃんに、多少なりとも心を許してるんじゃないかな。自分から介抱を申し出るなんて相当だと思う。アキも、洸介も、季沙も、みちるさんも、みんな驚いてたよ。当然、俺も」
「え……」
いま、なんと?
“自分から介抱”、って?
持っていたトレーを思わず落っことしそうになった。
だって2週間前の朝、寛人くんは、あたしが酔いつぶれて、シャツにゲロを吐かれたんで、不本意ながら仕方なく連れて帰ってきたみたいな口ぶりでしゃべっていたはずだ。