フキゲン・ハートビート
戸惑うあたしをちらりと横目で見て、息を吐くように笑うと、俊明さんはもうひとくちコーヒーを飲んだ。
「……二次会、どうしようか?って話になったとき、けっこうべろべろになった蒼依ちゃんを肩に担ぎながら、『やばそうだから連れて帰る』って、ヒロが言い出してさ。正直、地球が滅亡するんじゃないかと思うくらいびっくりした。おまえ本当にヒロだよな?って、思わず言いそうになったもんな」
左手に引っかけている黒い紙袋。
それが、いきなりずしっと重みを増した気がする。
「結局ヒロの家に泊まったんだろ?」
「え! あ! でもヤマシイことはなにもしてな……」
いやいや、なにを言っているのだ、あたしは!
俊明さんは困ったように笑い、うん、と相槌をうつ。
恥ずかしい。
いま絶対、自分から地雷を踏みぬいてしまった。
本当にやましいことはなにもないのに。
「あいつさ、けっこう潔癖っぽいとこあって、あんまり他人を家に上げたがらないんだよ。俺たちでさえほとんど入ったことないくらい」
「そ、そうなんですか……」
そうとは知らず、がっつりベッドまで使わせてもらってしまったことは、シッカリ墓穴を掘ったあとなので、さすがに言わないでおこう。