手の届く距離

兄がいるせいか、門限なども設けられず、無事に帰ってきなさいね、とだけ言われて暗黙の信頼を預かる。

少なくとも、今まで積み上げてきた実績もあるだろう。

調子が悪そうな人もいないし、トイレに人がいないことを確認した。

予約時間限度ぎりぎりまで粘り、幹事の最後の仕事として店に残っているメンバーに解散を伝えて、店の外に追いたて、忘れ物がないか席を見て回る。

取り合えず、今のところ酔いつぶれる寸前の千鳥足君も仲のいい人が支えてしてくれているし、帰る人は各自帰れそうなことに安心する。

解散のメンバーと別れを惜しむように話をしていると、晴香に腕を取られる。

「ほら、祥ちゃん置いて行かれちゃうわ。ちょっと忠告があるから、私に付き合いなさい。みんな気をつけて帰ってねぇ」

晴香さんと同じような挨拶をして、今度こそ解散メンバーと別れ、晴香さんと歩き出す。

「忠告って?」

「取り合えず寒いから、行くよぉ」

すでに2次会に向かっているメンバーは、結構先まで進んでしまっている。

広瀬さんは相変わらず店長に絡まれている。

川原がこちらを振り向いて手招きするのが見えて、二人で走り出した。
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