手の届く距離


翌日は朝から携帯が仕事をした。

一番最初は晴香さん。

「祥ちゃん、面白いことがわかったわよぉ。出来るだけ早く会いましょ。今日!ダメなら夜電話で!」

かなりのハイテンションで一方的に話をして、あとはメール決めよう、とこちらの返事も待たずに切れた。

貴重なはずの朝の5分を割いてでも、どうしても話したかったらしい。

やはり、あの後すぐに川原に連絡したらしく、自分の失敗が及ぼした影響を、まずは心の中で謝罪する。

二人目は午前の授業が終わって、みんなで学食に行こうとしたら呼び出された。

電話は川原から。

「晴香さんをけしかけたの祥子先輩っすよね。勘弁してくださいよ」

先輩呼びに戻っている上、川原の弱りきった声にすぐ謝罪を述べて、晴香さんの横暴を聞いてくださいと泣きつかれた。

それに関しては、全面的に私が悪い。

今日の夕方、学校が終わったら晴香さんと会う約束も、晴香さん伝いで川原に届いていた上、そこに呼び出されたことも聞く。

ホント、ごめん。

何でもするから、許して。

精一杯の謝罪をして、夕方会う約束をする。

3番目は由香里。

「先輩、力を貸してください」

川原の電話が終わって、先に向かわせた友人たちと合流するべく食堂に足を進めようとしたところだった。

一瞬だけ、おなかの空き具合と相談したが、早く出てすぐに用事を終わらせてから落ち着いて食べられることを選択して通話する。

昨日寝る前に送ったメールは『元気?最近どうよ』とひろーく、やんわり聞いたつもりだったが、いきなりのSOSに緊急性があると判断して、そのまま昼食なしを覚悟する。

今聞くよ、と返事した電話口で、由香里はすぐに涙声になった。

「ありがとうございます」

「どうした由香ぴょん。何事?事件?」

可愛らしい容姿の反面、決まったことは遣り通す強さがあった。

その彼女が泣くほど困っている事態なのだ。



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